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平成24年12月議会一般質問(平成24年12月18日)

質疑・質問事項 
1 人口減少・高齢化社会の到来を直視した取り組みについて
(1) 合計特殊出生率二・〇を目指す意義と現実性
(2) 大阪府人口減少社会白書の評価と静岡県独自の将来人口推計等の人口減少を前提とした取り組みの必要性
2 県有資産全体の維持管理・更新費の将来推計と資産経営の早期推進について
3 人口減少・高齢化社会を直視した内陸フロンティア構想の推進について
(1) 内陸フロンティア構想への人口減少社会の視点の追加
(2) より安全・安心な地域への移転促進施策の拡充

○二十五番(鈴木 智君) 民主党・ふじのくに県議団の鈴木智です。
 私は、人口減少・高齢化社会の到来を直視した将来構想と施策策定の必要性をテーマに、三つの項目について質問いたします。
 初めに、人口減少・高齢化社会の到来を直視した取り組みについて二点伺います。
 一点目は、合計特殊出生率二・〇を目指す意義と現実性についてです。
 ことしの一月、国立社会保障・人口問題研究所――社人研は、日本の人口は二〇四〇年に現在の人口から約二千万人減の一億七百二十八万人、二〇六〇年には約四千万人減の八千六百七十四万人になるという推計を公表しました。これから二〇四〇年まで平均七十万人以上、その後は平均百万人以上の人口が毎年減る、つまり島根県あるいは静岡市に相当する人口が日本列島から毎年消えていくということです。
 都道府県別の将来人口推計として最新である二〇〇七年五月の推計では、静岡県の人口は二〇一〇年の約三百七十六万五千人が十五年後の二〇二五年には約二十五万人減の三百五十一万一千人、二十五年後の二〇三五年には五十二万人減の三百二十四万二千人になるとしています。
 県でも、総合計画基本構想やふじのくに移住・定住促進戦略等で社人研の推計を引用していますが、そうした人口減少に関する県当局の認識については疑問があります。例えば総合計画基本構想では、将来の人口減少や高齢化に言及しながらも課題としては、「女性や高齢者を初め、多様な人材が活躍できる環境を整備し、県外への進学や就職による若者の流出を抑えるとともに、地域の魅力を磨き、国内外から専門知識や高度な技術・技能などを備えた人材の確保と育成に努める必要がある」と述べるのみです。また私は、総務委員会や企画文化観光委員会で認識についてただしてきましたが、少子化対策や移住・定住施策を総動員して人口減少を食いとめるという答弁にとどまっており、推計どおりに人口が減少した場合の財政における影響や対策等は全く示されていません。
 そもそも、少子化対策や移住・定住施策を総動員して人口減少を食いとめるという考え方自体にも疑問がございます。なぜなら少子化や人口減少の問題は最近始まったばかりのものではないからです。既に一九七五年に国の合計特殊出生率は二・〇を下回り、その後も基本的に下がり続けてきました。それでも最近まで人口が減少しなかったのは、高齢者人口が現在ほど多くなくまた寿命が延び続けていたからです。最近では寿命の延びも小さくなりまた団塊の世代が高齢者になる一方、低い出生率に加え出産適齢期の世代の人口が大幅に減っています。そのため現在は少産多死の時代となっており、そうした構造の変化は数十年かかって生じたと言うべきものです。
 したがって、人口減少や高齢化を食いとめるために、多産少死あるいは中産中死の人口構造に変えるには少なくとも数十年の時が必要であり、出生率がそれなりに上がったとしても人口減少の流れは当面変わらないというのが現実です。実際国土交通省の国土審議会長期展望委員会が昨年二月に公表した国土の長期展望中間取りまとめでは、二〇〇八年に合計特殊出生率が人口置換水準である二・〇七となり、その後も二・〇七が維持できたとしても人口減少は続き、二〇五〇年には約一千三百万人減の一億一千四百九十一万人、二一〇〇年には約二千万人減の一億七百四十万人になると推計しています。
 そこで伺いますが、県は総合計画で平成二十二年度からおおむね十年間の間に出生率二・〇の達成を目指すとしていますが、その意義や目的は何でしょうか。二・〇を達成するとその後の人口はどうなるのでしょうか。人口減少がとまると考えているのかどうか伺います。
 また、少子化対策の優等生と言われるフランスでは、一九九四年の合計特殊出生率一・六六を二〇〇六年には二・〇にまで回復させました。つまり毎年平均で〇・〇二八ポイントずつ十二年間かけて上昇させています。一方静岡県では二〇一一年の出生率は一・四九です。これを十年間で二・〇にするには年平均〇・〇五一、つまりフランスの倍近いペースで上げなければなりませんが、果たして可能でしょうか。またそうした目標を設定した根拠は何か質問いたします。
 二点目は、大阪府人口減少社会白書の評価と静岡県独自の将来人口推計等の人口減少を前提とした取り組みの必要性についてです。
 前述の人口推計の数字は大変衝撃的なものです。しかし一連の数字は実は前回の二〇〇六年十二月の推計よりも上方修正されたものです。二〇〇六年の推計では二〇一〇年の人口は一億二千七百十八万人になるとしていましたが、国勢調査による二〇一〇年の人口は一億二千八百六万人と推計よりも八十八万人多い結果となりました。つまり日本全体の人口減少の流れは、二〇〇六年の推計よりもわずかですが緩やかになっているのです。
 しかし、静岡県では状況が異なります。前述の二〇〇七年五月の都道府県別人口推計は、二〇〇六年十二月の国の人口推計に基づいて計算されたものですが、当時の推計では二〇一〇年の県の人口は三百七十七万一千人になるとしていました。ところが同年の国勢調査による県の人口は三百七十六万五千人と推計よりも六千人少ない。つまり日本全体の傾向に反し、静岡県では人口減少が推計より進んでいることが明らかになったのです。
 さらに、二〇〇七年の推計では二〇一五年の人口は三百七十一万二千人になるとしていますが、二〇一一年十月の静岡県の人口は前年より約一万二千四百人減の三百七十五万二千六百人、そしてことし十月の人口はさらに一万六千人減の三百七十三万六千六百人と、年間一万人以上減という勢いで減少しており、二〇一五年の県の人口は二〇〇七年推計の数字を恐らく大きく下回るという状況です。つまり静岡県においては、今後数十年間人口は必ず減少することを前提とした長期計画や対策を早急に策定し、実行しなければならないのが自明の課題だと考えますが、県の所見を伺います。
 人口減少は否定的に考えられがちですが、今から十分な準備と対策を講じれば人口減少社会はむしろさまざまなチャンスや利益をもたらすはずだと考えます。例えば人口が減少した分ゆとりがある家や公園等を持つことが可能になります。また食料やエネルギーの自給率も今の生産量を維持するだけでも人口減少とともに上昇します。さらに人口が減少し高齢者の割合が増加することは、一人一人の特に高齢者の方々の役割がより重要になることでもあり、地域のつながりを取り戻し孤独死を防ぐこともできるようになるはずです。
 世界を見れば、人口の爆発的な増加は早急に解決すべき地球的課題となっており、中国やインド、アメリカ等もいずれは人口減少時代を迎えることになります。日本は世界最先端の現象である人口減少時代に突入した国であり、人口減少に適応した社会システムを他国に先んじて構築できれば、そのためのさまざまな技術は世界中に輸出できるものになると考えます。
 つまり、人口減少社会を直視し今から備えることによって、ピンチをチャンスに変えることは十分に可能であり、既にそうした取り組みを始めているのが大阪府です。大阪府はことしの三月に人口減少社会白書を公表しました。白書の目的は、人口減少社会の到来による影響や課題、対応の方向性を大阪府民を初め市町村や企業などオール大阪で共有することです。白書は、人口減少社会が及ぼす影響をマイナスからプラスに変えていくため、変革のチャンス、将来への備え、持続的発展という三つの観点から、「安全で安心して暮らせる定住都市・大阪」、「日本の成長エンジンとして持続的に発展する都市・大阪」の実現を目指すとしています。
 この大阪府のように、静岡県としても人口減少を前向きに捉えた長期戦略や計画を早急に策定すべきと考えますが、その必要性と大阪府人口減少社会白書の評価について県の所見を伺います。
 また、人口減少社会を直視する前提として、かつて行われていた県独自の将来人口推計を直ちに行うべきと考えます。なぜなら政府が公表した南海トラフ巨大地震における被害想定等のデータを検証しながら県が第四次地震被害想定の策定を進めているように、社人研の推計についても、県独自に県内事情をより細かく反映した計算を行えば、さらに正確で詳細な推計が可能になるからです。
 また、たとえ独自の推計結果が社人研のものと同様になったとしても、みずからの手で推計を行うことは人口減少という壮大な社会現象のさらなる理解につながり、加えて将来あり得るシナリオを独自に想定することは、直面する課題やとるべき政策の明確化につながるはずだからです。こうした県独自の将来人口推計の早期策定の必要性について県の所見を伺います。
 次に、県有資産全体の維持管理・更新費の将来推計と資産経営の早期推進について質問します。
 今月二日、中央自動車道上り線の笹子トンネルで天井板が崩落し九名もの方が犠牲となりました。一九七五年完成のトンネルであることから、老朽化による劣化が崩落の原因と言われています。我が国では、高度経済成長期に社会資本が集中的に整備され、これらのストックは――まさに笹子トンネルもその一つですが――建設後既に三十年以上が経過しているため、今後急速に老朽化が進むとされています。当然ながら適切に管理されなければ老朽化による事故の危険性が今後さらに高まることになりますが、笹子トンネルの事故はそのおそれが現実化したものと考えられます。こうした状況は静岡県でも同様であり、笹子トンネルのような事故が再発しないよう社会資本の適切な管理や更新が欠かせませんが、既述のように人口減少・高齢化が急速に進む中、そのための予算確保はさらに難しくなることが予想されます。
 前述の長期展望委員会では、道路、港湾、空港、公共賃貸住宅、下水道、都市公園、治水、海岸、上水道、廃棄物処理、文教施設、治山、農林漁業、工業用水道、地下鉄の十五分野における社会資本構造物の維持管理・更新費に関する将来推計も行なっています。それによれば全国的には二〇三〇年ごろまでに倍増します。静岡県では、二〇一〇年の人口一人当たりの維持更新費は年間五万七千円であるのに対し、二〇三〇年に約一・九倍の十万九千円、二〇五〇年には約二・三倍の十三万円になるとしています。これはあくまでも二〇一一年以降の新設改良費をゼロと仮定した場合であり、今後も新規の道路や津波対策施設等が整備される静岡県では、こうした維持更新費はさらにふえることになります。
 県は、先週十三日の行財政改革推進委員会で、道路等のインフラや県営住宅、職員住宅を除く普通会計における県有施設、これは資産価値としては約三千二百億円分あるわけですがその財産の更新費用の将来推計を公表しました。それによれば過去五年間で平均して年百四十八億二千万円かかっているのに対し、今後は年平均百八十八億七百万円、つまり毎年四十億円多くなるということです。現時点の来年度予算案で四百四十三億円の財源不足が予想される中、この四十億円という数字は決して小さくはありません。
 また、道路等のインフラ資産や公営企業会計等の全ての施設の維持更新費も含めればさらに多額になることが予想されます。県がその維持管理に主導的な責任を負う県有資産、つまり財務諸表の連結貸借対照表における非金融資産に含まれる建物や道路、橋梁等の全ての施設の価値は、合計二兆五千億円以上もあります。十三日に公表した推計だけでなく、非金融資産全体の施設の維持管理・更新費が幾ら必要になり、その一方でどれだけ財源を確保できるのか中長期的な将来推計を早急に行うことは、県全体の今後の課題を明確化するのに不可欠であり、笹子トンネル事故を県内で再発させない取り組みの前提とすべきと考えますが所見を伺います。
 また、人口減少に伴って一層厳しくなる財政状況を考えれば、連結貸借対照表における非金融資産全体の施設の管理計画やコスト等を常に把握できる仕組みをつくり、安全性を最優先にしながらも厳しい財政に対応できるよう、聖域なき統合、合理化、廃止等のあらゆる選択肢、例えば全国初の大規模撤去工事である熊本県営荒瀬ダム撤去のようなインフラの廃止、老朽化している県立中央図書館と隣接の県立大図書館の統合、将来の人口減を見越した県立大と文芸大の統合、基幹的広域防災拠点としての静岡空港の機能強化にもつながる合理化策として、例えば他県の緊急援助隊の集結地として必ずしもアクセスがいいとは言えない静岡県消防学校の空港隣接地への移転ですとか、津波の危険が否定できない航空自衛隊静浜基地の機能、部隊の静岡空港への移転、これはもちろん国との調整が必要ですが、最初から無理だとは決めつけずに考え得る選択肢を全て検討し、そして可能なものを実行することで、将来の維持管理・更新費を最大限削減する努力が必要と考えますが所見を伺います。
 最後に、人口減少・高齢化社会を直視した内陸フロンティア構想の推進について二点伺います。
 一点目は、内陸フロンティア構想への人口減少社会の視点の追加についてです。
 知事は、十一月三十日の提案説明の中で「内陸のフロンティアを拓く取り組みとは、予防防災と地域成長モデルを両立させるものである」と述べました。前述のように今後人口減少や高齢化が確実に進む以上、人口減少社会にふさわしいまちづくりを行わなければ地域の成長はあり得ません。
 人口が急増した高度成長時代、洪水や崖崩れ、地盤の液状化、津波等の自然災害の危険性に必ずしも十分な配慮がされないまま住宅地が各地に整備されました。今後も人口がふえるのであればそうした地域に住み続けるのも仕方ないかもしれませんが、人口減少社会の到来はより安全な地域への移転を可能にするということです。また県全体の人口が減少しても各地域の中心地に人口が移動し集まることができれば、地域のにぎわいは維持されます。加えて人口がまばらに点在するのではなくある地域にまとまることは、必要な社会インフラやその維持コストの縮小にもつながります。
 つまり、内陸フロンティア構想が主眼を置いている津波の危険度が高い海岸部から内陸部への移転だけでなく、洪水等の危険がある河川周辺地域や崖崩れ、深層崩壊、火山噴火に伴う危険等が危惧される山間部等からより安全な内陸部への移転も促進し、移転跡地については災害に強いまたは復旧が容易な公園、農林漁業施設や太陽光、風力の発電施設等を整備する、もしくはかつての森林等の自然に戻すという政策を進めれば、災害に強いだけでなく人口減少社会に対応した静岡県を築くことにもつながるはずです。
 こうした人口減少社会への対応という視点を内陸フロンティア構想に明確に加えるべきと考えますが、所見を伺います。
 二点目は、より安全・安心な地域への移転促進施策の拡充についてです。
 個人や集団の移転を促進するための施策拡充の必要性は、昨年度の大規模地震対策特別委員会の報告書でも津波対策の視点から提言されています。また増田寛也元総務大臣が岩手県知事時代に人口減少対策も目指して導入したがけ地近接等危険住宅移転事業に補助金を上乗せするがけ崩れ危険住宅移転促進事業のように、従来型のハード対策ではなくさまざまな災害の危険地域にある住宅や集落の安全な市街地等への移転を促進する県独自の仕組みを導入することは、災害対策と同時に人口減少対策の推進にもなり、また大幅なコスト削減や時間短縮にもつながると考えます。
 例えば、県の崖崩れ対策事業では、一九六八年以来昨年度までに約千五百億円の予算を費やし、約四万七千二百人の県民の安全が確保されたことになっています。しかし崖崩れ対策事業が未実施の危険箇所に今もなお約九万人も住んでおり、そうした方々を守るための全事業を完了するには今のペースでは百四十年近くかかり、またここ五年間平均の保全人口一人当たり単価約四百四十万円を単純に当てはめれば、崖崩れ対策事業だけでまだ四千億円近い費用が必要になります。
 一方、前述の岩手県がけ崩れ危険住宅移転促進事業では、十一戸の移転に要した事業費はがけ地近接等危険住宅移転事業を含め約五千八百万円、一人当たり約二百万円です。加えて崖崩れ対策事業は完了後も定期的に維持管理費がかかりますが、移転促進事業の場合は移転時のみしか公費はかかりません。移転促進事業のほうが明らかに経済的であり、より使いやすい制度を構築できれば時間の短縮も期待できます。さらに町なかに移転してもらえば、人口減少対策や社会インフラコストの削減にもなります。県では「TOUKAI―0」プロジェクトとして住宅の耐震補強に助成しており、個人資産である住宅に対して支援ができないわけではありません。また都市部等への移転の促進は地域のにぎわいの維持や社会インフラコストの削減にもなることから、極めて公共性が高い事業だと考えます。
 沼津市内浦重須地区のように、既存制度による集落移転の取り組みが県内でも始まっていますが、思うようには進んでいません。沿岸部や山間部等から移転したくてもできない県民は恐らく多いと思います。またこれから人口が無秩序に減少した場合、多くの空き家に埋もれてわずかな住民が点在して住むというゴーストタウンが県内各地に出現する可能性が高いと考えます。
 したがって、防災と同時に人口減少への対応という観点から、より安全な内陸部、都市部への個人、集落の移転を政策的に誘導する県独自の制度を早急に導入すべきと考えますが、大規模地震対策特別委員会の提言や岩手県の事例を踏まえた県の所見と決意を伺います。質問は以上です。ありがとうございました。(拍手)
○議長(小楠和男君) 川勝知事。
(知事 川勝平太君登壇)
○知事(川勝平太君) 鈴木智議員にお答えいたします。
 初めに、人口減少・高齢化社会の到来を直視した取り組みについてのうち、大阪府人口減少社会白書の評価と静岡県独自の将来人口推計等の人口減少を前提とした取り組みの必要性についてであります。
 日本は、現在世界屈指のスピードで人口減少と高齢化が進んでいます。こうした現実に私は強い危機感を持っております。未来への想像力を持って対応していかねばなりません。まず私は、知事に就任して以来人口減少による影響や課題を見据えまして、成長産業の育成、六次産業化の推進、女性の就業支援、子育て環境の整備、高齢者の社会参加の促進による人材活用などさまざまな取り組みをしてまいりました。また教育、福祉、経済、基盤整備などの各分野別計画におきましても、将来の人口減少を盛り込んで短期、中長期の視点から対策を講じております。
 大阪府の白書も、本県と同様の認識に立って人口減少社会において取り組むべき施策を明示し、府民の方々に現状認識と課題、対策の必要性を訴えたものだと考えております。大阪府の合計特殊出生率は極めて低いものです。平成二十三年に発表された数字がございますが、全国で合計特殊出生率平均は一・三九、本県は一・四九です。それに対しまして大阪は一・三〇ということで、一番低いのは東京ですけれども東京が一・〇六、下から数えて数番目というところに大阪がいます。したがって大阪の現実というのは極めて厳しいと言わねばなりません。
 また、この白書には書かれていませんけれども健康寿命というのがございます。御案内のように年齢を重ねても元気で日常生活ができるというのが健康寿命ですが、日本の中で全国一が静岡県です。全国最低が大阪でございます。ですからこうした点に照らしまして、高齢化社会になっても高齢者が元気で日常生活を過ごせるといういわゆる健康寿命を延ばすと、健康寿命で日本一になり続けるということが大切だというふうに考えております。
 また、歴史的に見ますと、女性が社会的に能力を発揮するようになりますと人口が安定しているという歴史的事実がございます。平安の時代、それから江戸時代の中期以降です。戦争がありません。そうしますと女性の進出が目立ってまいります。それは平和な社会ですから、その平和の反対は戦争でございますけれども、戦争は人を殺傷する、生活を破壊する、環境を破壊するということで最大の害悪だと存じますけれども、その反対、平和を維持するというのは、これは悪に対して徳のある施策が講じられているのだというふうに存じます。
 人口が安定するということは、合計特殊出生率、すなわち女性が一生の間にどのぐらいのお子様を産むかというこの全国における統計数字でございますけれども、二・〇七という数字ですと人口が減りもせずふえもしないということです。ですから二人ほどということが望ましい。そうしますと江戸時代の一家族当たりの平均構成員は四、五名です。大体二、三人ということで、我々はしずおか富2、3っ子(ふじさんっこ)というプロジェクトを立ち上げているところでございます。いかにしてこのような状況をこの静岡県内でつくり上げるかさまざまな施策を講じておりますけれども、まだ十分でないと言わざるを得ません。効果があらわれていないということでございます。
 総合計画などの長期計画の策定、施策の実施に当たりましては、引き続き県内各地域の特性を十分に勘案しなくてはならないと存じます。県下全体では一・四九ですけれどもこれを全国の中で比べるということも大事です。一方で県内における三十五市町の合計特殊出生率の数字も出ております。これを議員もお持ちだと存じますけれども県民手帳がございます。そこに入れていただきました。ですから各市町の首長さん、また関係者はこの数字をごらんになって、それぞれの市町における今の人口動態がどのようになっているかということを調べていただきたい。これは必ずしも経済的に豊かな市町が出生率が高いというわけではないんですね。ですから子育てしやすいような先進事例をその合計特殊出生率の高い市町から学びながら、それを広めていくというプロジェクトにも今取り組んでいるところでございます。国の人口推計、また分析内容を参考にしながらも、この人口減少局面におきましても、高齢者の健康を維持しつつ地域の活力を伸長させる施策に企業、団体、県民の皆様との協働で取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、人口減少・高齢化社会を直視した内陸フロンティア構想の推進についてのうち、内陸フロンティア構想への人口減少社会の視点の追加についてであります。
 昨日、内閣府の総合特区のヒアリングがございました。関係市長、町長、団体の皆様方、何と三十一名も――プレスを除きますけれども――出席なさいまして、内陸のフロンティアを拓く取り組みが持つ国家的意義、必要性など評価・調査検討会の委員の皆様に訴えてきたところでございます。感触もよく実現に向けてさらに意を強くしたところでございますが、地域に誇りと愛着を持つ皆様の思いを大切にして、県民、企業、市町の皆様とともに安全・安心な魅力ある地域づくりに邁進しなくちゃならないという思いを新たにいたしました。
 現在、日本の太平洋工業ベルト地帯にいわば一極集中型で人口、産業が偏って存在しています。沿岸域に偏った土地利用になっているということでございます。それは東日本大震災で明らかになりましたように災害への脆弱性というものがあるということです。また大都市では過密が生じておりますし、一方地方では過疎化がますます進行しているという現状がございます。国が一九六〇年代から五度の国土計画を策定してまいりましたけれども、この課題が常に指摘されながらも変革がなし遂げられていないのが現状です。東日本大震災の発生は、こうした臨海工業地帯に偏る形での国土利用のあり方に猛省を促したものだと受けとめております。開発重視から質的向上に価値観、生活様式を大きく変えねばなりません。人口減少・超高齢化社会の進行の中で、どのようにしてこの日本の国土、我々にとってはこのふじのくに静岡県の地域の国土利用をしていくかという、そのアイデアと知恵と実現が求められているわけであります。
 内陸のフロンティア構想というのは、災害に強くかつ人口減少時代にも対応できる新しい国土利用のあり方を提案するグランドデザインと我々は考えております。これまでの臨海都市部、これは災害に対する脆弱性がございますので防災・減災対策を進めなければなりませんので、移転によって生まれる空間に潤いのある緑地帯などを創出し、そこで六次産業などを推進することを通して地域を再生していこうと思っております。
 一方、津波の心配のない内陸高台には、乱開発をせずにいわば工業都市とか商業都市とは違う農産物、特に園芸農産物が静岡県の場合多うございますので農芸品という形容が最も適切かと存じますけれども、農芸品をつくる百六十二キロの内陸高台、いわばそれは農芸都市という緑と水にあふれた美しい景観――ガーデンシティーというように形容できるかと存じますけれども――そこで日本人らしい新しいライフスタイルをリードしてまいりたいと考えております。
 ちなみに、一番日本で合計特殊出生率の高いのは沖縄です。その次に高いのは宮崎です、一・六八。沖縄は一・八六。鹿児島が三位で一・六四、長崎が一・六〇、佐賀が一・六一です。こうしたところは、ごらんになってわかりますように熊本などまさに阿蘇の麓で緑が豊かでございます。こうしたことと人口があまり減らないということは関係していると私は考えております。なぜならば東京は合計特殊出生率が最低です。そして神奈川あるいは京都あるいは先ほどの大阪などは、都市化が進んで合計特殊出生率は下から数えて早いところにあるわけです。したがって緑豊かなところ、これは比較的広いということでございますのでおじいちゃん、おばあちゃんと御一緒に生活ができる。そうすると孫の世話もしやすいということがございますので、こういう内陸のフロンティアに家・庭一体の豊かな生活空間をつくり上げると、それが子育てしやすい社会環境になるというふうにも見込まれます。こうしたことを通じまして、私どもは内陸フロンティアの推進と高齢化社会に備えた人口減少化社会を克服する、そういう地域づくりをしてまいりたいと考えているところでございます。
 その他の御質問につきましては、関係部局長のほうから御答弁を申し上げます。
○議長(小楠和男君) 池谷健康福祉部長。
(健康福祉部長 池谷享士君登壇)
○健康福祉部長(池谷享士君) 人口減少・高齢化社会の到来を直視した取り組みのうち、合計特殊出生率二・〇を目指す意義と現実性についてお答えをいたします。
 総合計画の基本構想における「合計特殊出生率二」の目標は、人口減少に歯どめをかけるとともに、特に若い世代からの二人から三人の子供が欲しいといった希望をかなえるために、少子化対策に取り組む本県の強い姿勢を示したものでございます。子供を産み育てるということは基本的に私的なものと考えますが、子供を育てる環境は社会環境によって大きく影響されますことから、そこに社会的な支えを明確な方針のもとに入れていくということが重要であるとの認識でございます。
 こうしたことから、県といたしましては、保育サービスや医療費助成の充実、地域や職場における子育て支援の促進などの施策を推進し、誰もが安心して希望する人数の子供を産み育てることができる環境づくりに努めているところでございます。
 平成十六年に底を打った出生率は、近年緩やかな上昇傾向にあります。高い目標であると認識はしておりますが、全庁を挙げてより一層少子化対策に意欲的に取り組み、本県の未来を担う多くの子供たちを育むことができる富国有徳の理想郷“ふじのくに”づくりに邁進してまいります。以上であります。
○議長(小楠和男君) 土屋経営管理部長。
(経営管理部長 土屋優行君登壇)
○経営管理部長(土屋優行君) 県有資産全体の維持管理・更新費の将来推計と資産経営の早期推進についてお答えいたします。
 県が管理する道路や河川などの公共土木施設につきましては、平成十五年度の土木施設長寿命化行動方針策定に当たりまして将来の維持更新費を推計しております。策定から八年が経過し新たな課題等に対応するため本年五月に社会資本長寿命化計画検討委員会を立ち上げ、最新の情報、知見を踏まえ行動方針の見直しを行っているというところでございます。
 庁舎などの施設につきましては、本年度ファシリティマネジメントの取り組みの基本的な考え方を作成しており、議員からも御紹介いただきましたとおり先日開催されました行財政改革推進委員会において議論をいただいたところであります。議員御指摘の人口減少社会の到来などの社会情勢の変化を踏まえまして、一定の条件のもと建てかえや大規模改修に要する費用を試算しているところでございます。その他の県有資産の維持管理・更新費の将来推計につきましても、県の資産経営の課題を明らかにする観点から大切なものと考えておりますので、必要に応じて取り組んでまいります。
 県といたしましては、これまでも維持管理経費の縮減や更新経費の平準化、未利用財産の売却などに取り組んでまいりましたが、県の資産を良質な状態で次世代に引き継いでいくためにも、さまざまな視点で検証を行いながら総量の適正化、あるいは長寿命化などに取り組みまして、維持管理費の縮減とともにその財源の確保を図り、県有資産の最適化に一層努めてまいりたいと思ってございます。以上であります。
○議長(小楠和男君) 伊藤静岡県理事。
(静岡県理事 伊藤秀治君登壇)
○静岡県理事(伊藤秀治君) 人口減少・高齢化社会を直視した内陸フロンティア構想の推進についてのうち、より安全・安心な地域への移転促進施策の拡充についてお答えいたします。
 有事に備えた防災・減災対策の強化と平時における地域の成長モデルの実現の両立を目指す内陸のフロンティアを拓く取り組みでは、津波の心配のない内陸高台部に産業や居住機能が自然と調和するガーデンシティーを形成し、住民や企業の皆様の移転の受け皿を築いてまいります。
 防災を目的として住居等を移転する場合には、国の防災集団移転促進事業などがあります。この制度を活用し高台への集団移転を勉強している沼津市内浦重須地区では、移転住民や市の経済的負担が大きいこと、移転跡地を災害危険区域に指定して建築制限を課すため地域住民と地権者全員の同意が必要となることなどが課題とされております。
 また、経済的な負担にとどまらず、事業継続など生活維持のために移転が困難である方々や住みなれた場所を動くことに抵抗感が強い方がいらっしゃることも移転を困難にしているものと認識しております。
 広域的に移転を政策誘導することは、このように限定的な区域でも住民の合意形成が課題であります。また経済的負担にも増して住民の皆様の地域への愛着など制度では補えない問題もございますことから、それぞれの地域に合った形で住民や市町の意向を十分に踏まえさまざまな防災対策を総合的に検討する中で判断してまいりたいと考えております。以上であります。
○議長(小楠和男君) 二十五番 鈴木 智君。
(二十五番 鈴木 智君登壇)
○二十五番(鈴木 智君) 御答弁ありがとうございました。
 まず、出生率の関係なんですが、私も二・〇を目指すことを否定するつもりは全くございませんが、ではいつごろ二・〇を達成したらその後人口がどうなるか。そこはやはりある程度推計をしていきませんと、じゃこれからどれだけ税収が確保できて、それに対してこれからどれだけ借金を重ねても大丈夫なのか。
 そういったところの具体像が見えてこないものですから、まず再質問したいんですが、先ほど御答弁いただけなかった静岡県独自の将来人口推計の早期策定についてお考えを再度確認したいと思います。
 次に、施設の維持更新費についてなんですが、県では本年度の県政世論調査で社会資本整備の方向性に関する意識について聞いております。結果は、「老朽化した施設の補修や更新を行いながら、新たな社会資本整備については精査し、特に必要なものに限り行う」が四一・八%ということで、最も多くの方が選択をされたということですが、当然ながら今後の改修のためのコストと財源のバランスによってどちらを優先すべきか。つまりは老朽施設の改修なのかあるいは新規施設の整備なのか、どちらをどれくらい優先するかというのは、今後どれくらいコストがかかるのかあるいは財源がどれくらい確保できるのか、そういったところによって当然考え方も変わるものと思いますので、ですから世論調査でのこういった質問をするのであれば、繰り返しになりますがまずは将来のコストと財源がどのようになるのか。
 一部の試算については先日公表していただいたわけですが、まだその対象になっていないインフラが二兆五千億円以上あるわけですから、その意味からも全県有資産の維持管理コストの将来推計を早急に行うべきと考えますが、再答弁をお願いしたいと思います。以上です。
○議長(小楠和男君) 伊藤静岡県理事。
(静岡県理事 伊藤秀治君登壇)
○静岡県理事(伊藤秀治君) 静岡県としての独自の将来人口推計についての再質問についてお答えいたします。
 現在、国の社会保障・人口問題研究所で行われています人口推計、これは五年ごとに実施されておりまして、国勢調査の結果をもとに数次にわたって公表されてきております。その確立された手法については一定の評価を得ているものと考えております。議員が御指摘になりました大阪府の白書におきましても、基本的にはその手法を踏襲したものと認識しております。
 来年には、そちらのほうから都道府県別の人口推計も公表されてくるものと考えられます。当然公表内容につきましては、十分に分析して研究しないといけないと考えておりますし、影響につきましても、さまざまな議論がされていますのでそういったものも踏まえつつ、検討していかないといけないと考えております。そうしたことを踏まえまして、総合計画を初めとして各種計画に反映させてまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。以上です。
○議長(小楠和男君) 土屋経営管理部長。
(経営管理部長 土屋優行君登壇)
○経営管理部長(土屋優行君) 県有資産の維持管理費全体をというお話でございますけれども、現在将来推計をしていない県有資産につきましては、各分野ごとに必要なものについて推計をしているということでございます。具体的には先ほど申し上げました社会資本の長寿命化計画検討委員会の中では、今までのインフラ以外に公園だとか漁港施設あるいは農業処理施設等従来対象としていなかったものにつきましても、新たに含めて推計をしたいというふうに考えてございます。
 例えば、その他の資産の物品だとか船舶あるいはソフトウエア等もございますので、全体についてやるよりは一つ一つやっていくということと、もう一つ積み上げ方式全体のものでいきますと個々の施設によって状況が異なるということと、将来の社会情勢あるいは行政ニーズの変化等ございますので、全体についてそれを維持管理するという前提ではなくて、一つ一つが必要か否かも判断をしながら算定をするということを考えてございますので、分野ごとの算定を今全体として考えてございます。以上であります。
○議長(小楠和男君) 二十五番 鈴木 智君。
(二十五番 鈴木 智君登壇)
○二十五番(鈴木 智君) 最後、もう一点だけ確認させていただきたいと思います。
 結局、その二・〇をいつごろ達成するのか、あるいはいつごろ、じゃ人口の減少はとまるのか、その辺がはっきりしないのはやはり独自に推計をしていないからだと思います。これからまた社人研のほうから推計が出るからということで独自の推計は必要ないということなんですが、では県としては基本的には社人研の推計どおり人口が減少して、ですから人口減少はとまらないというお考えなのかどうか再度確認します。お願いします。
○議長(小楠和男君) 川勝知事。
(知事 川勝平太君登壇)
○知事(川勝平太君) 人口減少の静岡県における将来像についての再質問にお答え申し上げます。
 日本は、縄文、弥生時代からいろいろな遺跡がございまして推計しております。そして統計数字がある程度可能になるのは江戸時代からですけれども、これまでの歴史で人口が減少したことは一度もありません。ですからこれは日本史上初めての経験を昭和四十年代といいますか、昭和後期から経験しているところでございます。したがって人口学者は二〇五〇年には八割ぐらいになって、そして二一〇〇年には半減するといったようなことを統計数字でやっているわけですが、私はしかし人口史の研究書などを見ますと、これは統計的にもちろん将来を推計することができるんですが、統計の後ろには生きている人間がいますので人間の意思というものがあるんだということを思うわけです。
 そうした中で、このままですと二・〇というのは望むべくもない現在の趨勢です。しかしもし若い方たちが二、三人は産める環境がつくられると、またそれが実現されるととまります。ですからそうした環境をつくろうというのが静岡県における目標で、それが二・〇になっているということです。
 ですから、これがいつできるかというのは、実は機械ではありませんので人の意思だということがございます。ですから婚活を民間といろんなNPOと協力しながらやり、二、三人育てやすい環境をつくり上げていく。これは、背景には独身のまだ社会的責任のない若い青年たちに無作為に聞きますと、将来家族を持てた場合には二、三人の子供が欲しいと言っているという、そういう意思があるからです。兄弟二人あったほうがいい、あるいは男二人だと妹があるいはお姉さんがいたほうがいい。そうした希望が出されているので、確実にここには二・〇にできる希望の源があるというふうに思っておりまして、それを実現するのは我々大人の役割だということで、この目標を下げないと。今こういうものを立てないと文字どおり人口学者の言う百年たてばもう半分になっていると。そのうちそのままいけばゼロになりますよ。そんなことはあり得ません。
 ですから、我々は意志を持ってしなくては、さもなければ六十五歳以上の人たちが圧倒的多数でそれを支えている働き盛りの人たちがほとんどいないと。そうしますと、高齢になりますといろんな福祉、社会保障の費用がかかります。それを誰が支えるのかということで物すごい負担が若い人にかかるので、そういうことも考えましてこういういびつな形での高齢化社会がこれ以上進行しないように、統計は統計として見ますけれども我々はふじのくにのふじさんっこをつくろうという意志を持って地域をつくっていきたいということでございます。
 これは、いつごろといういわば機械的な外挿法によって、ここになると幾らになるというふうなものではないと。ただし先生が言われるように独自のいわば推計をしてみる必要があるということは私自身も感じておりまして、近々日本における人口史の最高権威は鬼頭宏先生ですので、その方をお招きしてまずは県の幹部でその見識を承ると同時に対策も講じてまいりたいというふうに思っております。以上でございます。
○議長(小楠和男君) これで鈴木智君の質問は終わりました。

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