前静岡県議会議員すずきさとる新聞『すずしん』web版

平成25年12月議会一般質問(平成25年12月10日)

質疑・質問事項
1 人口減少社会を前提とした取り組みについて
(1) 静岡県独自の将来人口推計の分析と政策への具体的な反映
(2) 県有資産の維持管理・更新費の将来推計と長期財政見通し
2 静岡県の国際力強化のための取り組みについて
(1) 海外駐在員事務所の強化拡大
(2) 県職員の人材確保・育成
3 行政と地域が一体となった学校づくりのための取り組みについて
(1) 静岡式三十五人学級編制の維持強化
(2) コミュニティ・スクール導入促進のための取り組み

○副議長(渥美泰一君) 再開に先立ち御報告いたします。
 本日は、説明者として加藤教育委員会委員長が出席しておりますので、御承知おき願います。

○副議長(渥美泰一君) ただいまから会議を再開します。
 質疑及び一般質問を続けます。
 通告により、二十四番 鈴木 智君。
(二十四番 鈴木 智君登壇 拍手)
○二十四番(鈴木 智君) 民主党・ふじのくに県議団の鈴木智です。私は大きく三つの取り組みについて分割方式で質問いたします。
 まず初めに、人口減少社会を前提とした取り組みとして静岡県独自の将来人口推計の分析と政策への具体的な反映について伺います。
 本年十月に県は独自の将来人口推計の結果を公表しました。昨年十二月の一般質問で県も独自に将来人口推計を行うべきと主張した議員として、今回の取り組みについては前向きに評価しています。しかし独自の将来人口推計は、あくまでも政策を立案する上での道具にすぎません。現実に即して冷静に分析し、その結果を使いこなすことができて初めて将来人口推計という道具の評価は生まれます。そこで県独自の将来人口推計に関して三点伺います。
 県独自の将来人口推計では国立社会保障・人口問題研究所――社人研が、ことしの三月に公表した二〇一〇年から二〇四〇年までの日本の地域別将来人口推計を踏まえながら、五つのケースを仮定して推計しています。社人研の推計では静岡県の人口は二〇四〇年に三百三万五千人まで減少する。つまり二〇一〇年の人口より七十三万人減るとされているのに対し独自の推計では、最も減少するケースで二〇一〇年人口より六十七万七千人減。最も人口が維持されるケースでは三十二万二千人減になるという分析結果となっています。
 つまり独自の推計では、いずれのケースでも社人研の推計よりも人口減少は緩やかになるという結果になっています。なぜなら最近の静岡県の合計特殊出生率は、社人研が用いているものよりも高くなっているため、いずれのケースにおいても社人研のものより出生率は高くなると仮定されています。そして社会移動率においても社人研の推計値と同じかそれ以上の数値を用いているため、必然的に社人研の推計値よりも人口減少幅は緩やかになるからです。
 そこで一点目として伺いますが、独自の将来推計において社人研の数値よりも社会移動率がマイナスにならないという判断の根拠は何か具体的にお示しください。
 また、今議会の開会日に説明を受けました総合計画の次期基本計画案の中に新たに次の表現が追加されました。社人研の推計をもとに本県独自の分析を行ったところ仮に社会移動の増と合計特殊出生率二・〇を早期に達成した場合には、人口減少数を五割以上抑制することが可能との推計結果が出ており、出生率や転入人口を高める取り組みは重要であるというものですが、昨年の一般質問でも議論しましたように平成三十二年度までに出生率二・〇を達成することは事実上不可能です。また日本全体が人口減となる中で静岡県への社会移動率が増となる道筋は残念ながら見通せないことを考えれば、人口減少を五割以上抑制というのは現実的ではない想定だと考えます。
 そこで二点目の質問として、県はこの想定つまり社会移動率を社人研が設定した滋賀県の値とし、かつ合計特殊出生率が平成三十二年度までに二・〇に達すると仮定した推計を現実的に可能性があると考えているのでしょうか。その具体的な理由も含めて伺います。
 そして三点目の質問として、冒頭述べましたようにこの独自の将来人口推計の結果をどのように具体的に使いこなすのでしょうか。例えば上下水道や道路等のさまざまな需給計画に反映させるとともに、広島県の将来人口推計のように市町もデータとして使えるような将来人口推計を行って次期の都市計画区域マスタープラン等を作成する際の基礎データとするべきと考えますが、この点について県の方針を伺います。
 次に、県有資産の維持管理・更新費の将来推計と長期財政見通しについて伺います。
 昨年十二月の一般質問では、私は県が維持管理に主導的な責任を負う県有資産つまり財務諸表の連結貸借対照表における非金融資産に含まれる全ての施設、価値にして合計二兆四千億円ほどにもなる資産の維持管理・更新費の将来推計についても早急に行うべきと提言いたしました。現時点ではその全ての資産について推計が行われているわけではありませんが、昨年度末のことし三月に交通基盤部は、所管の主な施設の維持管理・更新費用について将来推計データを公表しました。それによれば二〇〇八年から二〇一二年の維持管理・更新費が平均で約二百四十七億円だったものが、二〇一三年からの十年間の平均では百六十三億円増の四百十一億円、二〇二三年からの十年間では倍増の約五百五億円になると推計されています。
 また経営管理部は、昨年十二月に県営住宅、職員住宅を除く県有の建物について建てかえや大規模改修に要する費用を試算しています。それによれば過去五年間の平均投資額約百四十八億円に対し、今後は平均で四十億円増の約百八十八億円になると推計されています。
 さらに、当局からデータを提供していただきインフラの老朽化問題では第一人者の根本祐二教授が代表を務めます東洋大学PPP研究センターが作成した自治体別社会資本更新投資計算簡略版ソフトを使用いたしまして、普通会計における建物、つまり県営住宅や職員住宅も含めた建物の維持更新費の計算を行ったところ、二〇一三年から三十二年の間で平均約二百六十二億円かかるという結果となりました。つまりさらに七十億円以上の増、前述の過去五年間の平均と比べれば百十億円以上ふえる可能性があり、これらを積み上げただけでも今後十年間から二十年間において維持更新費は毎年二百億円から三百億円以上、これまでよりさらに増加するおそれがあることがわかります。
 その一方で本年度から開始されたのが地震・津波対策アクションプログラム二〇一三です。今後十年間で総額四千二百億円、単純に年平均で四百二十億円もの莫大な予算が必要となるものです。これは私たちの生命や財産を守るための大変重要な計画です。しかし実際に計画どおりに達成できるかどうかについては、特に財政面の点から所属する建設委員会で何度も議論してきましたが、現時点では疑わしいと言わざるを得ません。なぜなら前述のように県有資産の維持更新費だけでも今後大幅な増額が見込まれるのに対し、今後五年間の財政中期見通しでは維持更新費の増額分やアクションプログラムの事業費を含まない中でも毎年四百億円を超える財源不足が見込まれ、また財源不足を補っていた基金も来年度には枯渇するからです。
 そこで、この地震・津波対策アクションプログラムの信頼性、実効性を高めるためにも大幅な増加が予想される県有資産全体の維持管理・更新費の推計を行い、そして前述の将来人口推計を踏まえた長期財政見通し、まずは少なくとも今後十年間の財政見通しを早急に策定し、総額でどれだけの財源不足となる可能性があるのか、そしてファシリティマネジメントやアセットマネジメントにおいて、どれくらいの経費削減が必要となるのか等を推計し削減の目標値を具体的に設定すべきと考えますが、県の方針を伺います。以上の質問について答弁を求めます。
○副議長(渥美泰一君) 池谷静岡県理事。
(静岡県理事 池谷 廣君登壇)
○静岡県理事(池谷 廣君) 鈴木智議員にお答えいたします。
 人口減少社会を前提とした取り組みについてのうち、静岡県独自の将来人口推計の分析と政策への具体的な反映についてであります。
 県では、現在策定中の総合計画や今後の県政運営の参考とするため独自の人口推計を行ったところであります。人口推計は主な仮定値である出生率と社会移動率にどのような値を置くかで大きく変わります。今回は出生率を総合計画の基本構想に掲げる二・〇とし、また基本構想で社会移動を転入超過とする目標を掲げていることなどを踏まえ、推計を行ったところであります。
 社会移動率は、出生率に比べ短期的に政策効果が出やすいことから社会移動率がプラスで大都市圏に近接し本県の産業構造に類似した滋賀県を例にとり、その社会経済状況や政策などを比較し今後の本県の政策に反映させていくために、あわせて推計を行ったところであります。県内市町の人口については現在推計作業を行っており、最終的な調整や各市町が利用できるようソフトの整備を行っておりますが、できるだけ早い時期に公開をしたいと考えております。
 今後は、本県の人口移動の要因と課題のより具体的な分析に努め、その結果を踏まえ適切な施策の展開に努めてまいります。以上であります。
○副議長(渥美泰一君) 土屋経営管理部長。
(経営管理部長 土屋優行君登壇)
○経営管理部長(土屋優行君) 人口減少社会を前提とした取り組みについてのうち、県有資産の維持管理・更新費の将来推計と長期財政見通しについてお答えいたします。
 本県でも全国の自治体と同様、高度経済成長期に多くの道路、河川、学校などの社会資本の整備を進めてまいりました。今後これらの社会資本の多くが老朽化し、更新時期を迎えることとなります。このため昨年度、分野別に現在と同じ機能で更新するという仮定のもと維持管理経費や更新費の将来推計を行ったところ、先ほど議員からも御紹介がありましたように多額の費用が必要と試算されたところでありますが、道路、河川などのいわゆるインフラ資産につきましては、これまでの長寿命化の取り組みを加速することといたします。
 一方、建物を中心とした県有施設につきましては、施設の総量適正化、長寿命化、維持管理経費の最適化、施設の有効活用の四つの柱から成るファシリティマネジメントの実施方針を作成し、次期総合計画や行財政改革大綱のもと今後四年間で段階的に取り組みを進めていく予定であります。
 個々の県有施設につきましては、果たすべき役割や機能が異なり社会情勢や行政ニーズの変化に応じて用途が変更されること、あるいは必要性が薄くなることもあり常に見直ししていく必要もありますことから長期にわたって正確な維持管理経費等を見積もることは難しいものと考えております。
 なお、将来の財政見通しにつきましては、県の歳入の三分の一以上を占める県税収入が国の税制改正や経済状況によって大きく変動することに加え、国の予算や地方財政対策の動向により大きな影響を受けますことから五年程度の中期見通しにより財政状況を推計するものが適当と考えております。以上であります。
○副議長(渥美泰一君) 鈴木 智君。
(二十四番 鈴木 智君登壇)
○二十四番(鈴木 智君) それでは、二問につきまして再質問させていただきます。
 中央公論の十二月号の特集壊死する地方都市の記事の中で増田寛也元岩手県知事は、右肩上がり経済、人口増を前提にした構造が一度でき上がると絶対にそれを変えようとしないのが日本だという趣旨の発言をしています。今回私が県の将来人口推計について質問いたしましたのは、同様の体質が県にもあるように感じられるからです。独自に将来人口推計を行ったのですから数十年は続く人口減少を何とか食いとめないと大変だというよりも、将来人口推計をもとにして人口減少社会でも機能する仕組みを示すことのほうがはるかに建設的だと考えます。今回市町のほうでも策定するということですから、それをぜひ具体化していただきたいと思いますが、こうした点につきまして再度所見を伺いたいと思います。
 次に、五年間で十分だということでありましたが、私は長期の財政見通しを推計するということは現役の私たちだけではなく、これから社会の主役となる子供たちの未来を考えることだと考えております。ですから不確定要素が多くて長期の推計ができないというのは、子供たちの未来に責任が持てないと言っているのと等しいと私は思っております。
 そこで提案ですが、例えば福岡市の取り組みを参考にしてはいかがでしょうか。福岡市は人口こそ約百五十万人ですが、予算規模は一般会計、特別会計、企業会計の総計で約一兆八千億円ございます。つまり静岡県より規模が大きい政令市でございます。その福岡市は本県同様に独自の将来人口推計を行い、また静岡県でいうファシリティマネジメントとアセットマネジメントの両方を福岡市では財政局が一元的に統括し、全施設の維持管理・更新費を計算しています。そして今後十年間の財政見通しの中で具体的な削減目標値を設定しています。
 福岡市がそういうふうにやっておるわけですから、ぜひとも福岡市のような例を研究して同様の取り組みを早急に行うべきと考えますが、ぜひ知事、再答弁をお願いいたします。以上の質問について答弁を求めます。
○副議長(渥美泰一君) 池谷静岡県理事。
○静岡県理事(池谷 廣君) 将来人口推計についての再質問についてお答えいたします。
 最初に、議員がまさにおっしゃいました人口推計は、あくまでも政策を立案する上での道具ですという、まさにこのことではないかと思います。今回県独自の人口推計のツールを私たちとしては推計したわけでございますけれども、推計結果ということよりもこれはあくまでも道具でありますから、いろんな形で使えるということでございます。今回は新しい基本計画のために推計をしておりますけれども、これから五年、十年、あるいは三十年を見据えたいろんな政策の中では当然人口減少ということも含めた推計が必要になってくると思いますし、そういうものを踏まえていろんな政策を検討していかなければいけないと思います。
 例えば、静岡県の都市計画区域マスタープラン策定方針というのが先般出されましたけれども、これについても基本的には人口減少というのを当然踏まえての策定方針という形でできております。ですからこれからも人口推計をあくまでもツールとして使いながら政策を立案していきたいと考えております。以上でございます。
○副議長(渥美泰一君) 土屋経営管理部長。
○経営管理部長(土屋優行君) 再質問にお答えいたします。
 まず、長期の財政見通しにつきましては、歳入歳出の見込みというのが毎年度変動する。特に今年度みたいに税制改正等があった場合については、将来の可能性を見込んだときに長い期間になればなるほど当然に不確実性が高まるということもございまして、五年間程度というのを見通しているという状況でございます。
 それから福岡市の例を参考に議員、挙げていただきましたけれども福岡市の例につきましても、私ども検討させていただきました。福岡市と県との違いを考えますと、まず市の歳入構造と県の歳入構造は違いがございまして、市の歳入構造については固定資産税がベースそれから住民税がベースということでございまして、歳入について将来が見通し得ると。ただ本県の状況につきましては先の見通しというのは、法人事業税、法人県民税、法人関係税という二税についての見通しが大きいということがございまして、景気変動を受けやすいという財政構造の違いがまずあるということが一つございます。
 それからもう一つは福岡市の推計の中でちょっと私どもと違うのは、新築、改築については福岡市の場合は含まれていないと。現状の建物を法定耐用年数まで使った場合の経費の積算ということでございまして、それが実態に合うのかどうか本県も検討したところですけれども、本県の場合は三十年間にわたった場合については大規模改修をする、六十年間という法定の期間までは一応使いましょうという前提で仮定をつくった上で算定をさせていただきました。かつ社会情勢によってかなり施設の必要性等が変わってきますので、それを将来を固定するのではなく毎年毎年見直しをかけるという前提で作業してございますので、福岡市の例、参考にさせていただきましたが一部使わせていただきましたけれども、全体をそのままではできないということの対応をさせていただきました。以上であります。
○副議長(渥美泰一君) 鈴木 智君。
(二十四番 鈴木 智君登壇)
○二十四番(鈴木 智君) この長期財政見通しにつきましては、私まだまだ不勉強なところもありますので、これはまた今後の課題ということで、引き続き議論させていただきたいと思っております。
 では、次に移ります。
 次に、静岡県の国際力強化の取り組みとして、まず海外駐在員事務所の強化拡大について伺います。
 シンガポールと台湾の海外駐在員事務所は、本年度に新たに強化、設置されたばかりですが、県職員は一人だけという体制では職員の健康上の問題等のために事務所機能に問題が生じたり、交代に伴い事務所機能が低下したり人脈が弱くなったりする可能性が高いと考えます。
 また、シンガポールの事務所は、もともと所管する国や地域が多いだけでなく最近だけでもタイと観光協力の趣意書を調印したり、川勝知事がインドを訪問、森山副知事がベトナムを訪問したりするなど具体的な活動も拡大しています。台湾事務所につきましても台湾の自治体と友好関係にある市町が県内には多いこともあり、事務所長は極めて多忙と伺っています。そのため事務所機能の維持向上や地域外交における市町との連携を強化するためにも例えば市町から職員を派遣してもらうことなども行いながら、上海、ソウル事務所と同様にシンガポールと台湾の事務所についても、早急に職員二人体制にすべきと考えますが、県の今後の方針を伺います。
 また、今夏に知事がモンゴルを訪問した際モンゴル側から現地に事務所を設置するよう要請があり、知事も前向きに検討すると答えました。安倍政権も注目するモンゴルとの関係をさらに発展させるためにも早期にモンゴル事務所を開設すべきと考えますが、県の方針を伺います。
 次に、国際力強化のための取り組みとして県職員の人材確保・育成について伺います。
 TPP交渉の進展等に見られるように、今後経済面での国際交流はさらに加速することが予想されます。また人口減少が少なくとも数十年は続く我が国におきましては、海外からの観光客誘致はもとより自治体や民間企業における人的交流、例えば優秀な外国人職員の採用や研修生の派遣、受け入れ等もさらに積極的に行う必要があると考えます。つまり地域外交に直接かかわる部局以外におきましても、語学力を初めとする国際力が県職員には必要になってきます。また県が積極的に国際力を強化するための人材確保や育成を進めることは、県内企業にも同様の取り組みへの投資を促すことにつながると考えます。
 県では既に大使館等の海外機関や外国の大学等に職員を派遣していますが、そうした国際力を高めるための研修は、国内における語学研修等も含めてさらに取り組む必要があると考えます。
 また、来年度の「静岡県職員募集」の冊子には、静岡県の特色であるはずの地域外交や海外駐在員事務所の文字が全く見当たらず、県庁においてさまざまな形で語学力や海外経験が生かされることが全く説明されていませんが、むしろ県の特色として打ち出すことで語学力や海外経験を持つ大学生、大学院生に積極的に静岡県庁に応募してもらい、採用していくことが今後はさらに必要ではないでしょうか。
 こうした県の国際力を強化するための人材確保と育成について、県の方針を伺います。以上の質問について答弁を求めます。
○副議長(渥美泰一君) 川勝知事。
○知事(川勝平太君) 静岡県の国際力強化のための取り組みについて、二点御質問がございました。
 まず、海外駐在員事務所の強化拡大についてお答えいたします。
 本県の地域外交の展開に当たりましては、重点国・地域を六つに目下のところ絞っております。中国、韓国、モンゴル、台湾、東南アジア、そしてハワイを中心にしたアメリカであります。その中で現在特に力を注いでおりますのは台湾と東南アジアです。台湾につきましては、将来的な定期便のデーリー化を通じて一層の交流人口の拡大を目指す方針であります。また東南アジアに対しましては、経済、観光、教育、文化等々、幅広い分野での交流を通じて本県への東南アジアの活力の取り込みを目指しております。
 本年度、新たにスタートを切りましたこの東南アジアと台湾の二つの駐在員事務所につきましては、即戦力となる現地職員をそれぞれ二名ずつ、したがって三人体制で運営をしております。管轄区域の広い東南アジアにおきましては、県内企業の進出支援拡充のため本年度からビジネスサポートデスクを新たに設置いたしました。そこと連携をすること、さらに現地の対外関係推進員も活用して支援体制の強化を図り、的確な事業推進に努めているところでございます。
 台湾につきましては確かに忙しいということはよく承知しておりますけれども、まことに結構なことだと思っておりまして、目下のところは充実した駐在員生活が送られているという認識を持っております。
 なお、台湾と東南アジアの事務所は、単独化あるいは新設の初年度でありますので――単独化というのは、今まで東南アジアの場合はジェトロの中にございましたけれども、そこから四半世紀のいろいろな経緯を経て独立したということなんですが、そういうことでございますので今後事業効果の検証を十分に行う必要があります。また行政需要、市町や民間への支援に応じた業務量の推移をも注視したいと。必要に応じて運営体制を検討することにしております。
 友好提携二周年を迎え高校生や経済、医療関係者の相互訪問など幅広い分野における交流がモンゴルとの関係では進行しております。現地とのより緊密な連絡体制を築くことが重要となっており向こうの大臣、あるいはドルノゴビ県からぜひ駐在員をということで、本県の存在感が高まっているというあかしであります。
 そこで、現地における機動性などを考慮いたしまして、まずは日本の文化、習慣にも精通している現地在住の人材を連絡員として配置する方向で検討をして既にもうそういう方向で動いております。またモンゴル政府の信任の厚い方の御支援も賜ることも既に決定をしております。
 今後、議員から御提案いただきました市町との連携を進めることが大変重要です。静岡県三十五市町のうち、かなり多くの市町が独自の地域外交を展開されております。目下のところ県と市町の地域外交が、必ずしも意思疎通が図られた形で行われているのではないといううらみがございます。こうしたのは、これまではまずはそういうことを始めるということから来たのですけれども、これほど規模が大きくなってまいりますと県を中心に市町と連携をした形で静岡県、市町が全体として地域外交を協力をしながら、一体感をもって進めていくということの重要性を今、私自身も痛感しているところであります。
 こういう形を通じまして、本県の魅力の発信や民間を主体とする交流の促進も図りながら友好的互恵・互助の精神に基づく相互にメリットのある地域外交を展開し、本県の存在感を高め、一層の発展に資するように努めてまいりたいと考えております。
 次に、国際力強化のための県職員の人材確保・育成についてでありますが、グローバル化が進行しておりまして国際感覚や広い視野、さらには時代の動きに敏感で行動力のある人材を確保・育成していくことが大変重要な課題になっております。このため本県におきましては、元オランダ大使の東郷和彦氏を対外関係担当の補佐官という名前のアドバイザーとしてお招きしている次第でございます。
 そしてまた、外国語を母国語とする職員。アメリカ、中国、モンゴルに関しましては、そうした職員を採用しております。ただ最も簡単にそういう方を雇えると思った韓国については、なかなか人選に悩んでいるところがございますが、ともあれ県組織では得がたい高度な専門的知識と経験を備えた人材を確保してまいりたいというふうに思っておりまして、目下のところそういう形で働いている外国籍のあるいは外国語を母国語とする職員は、その任を十分に果たしているという印象を持っております。
 また、外務省の在外公館や海外の研究機関等へ職員を積極的に派遣するほか地域外交分野のスペシャリストとして将来活躍を希望し、向上心のある職員につきましては、関連する部署に計画的に配置いたしまして現場での対応力や交渉力を備え海外での業務に精通した職員の育成を図っているところです。
 さらに今年度は、即戦力となる人材を確保するために民間企業における海外勤務の経験者や青年海外協力隊経験者を対象とした採用試験を実施いたしました。二十一人が応募されて一人採用したということでございますが、総合商社に在職している若者の採用が内定したところでございます。
 今後とも本県の国際力を高めるため、先ほど議員御指摘のように職員募集のところにもそうしたところを明確に記して、さまざまな手法を駆使して人材の確保と育成に努めてまいる所存でございます。いろいろとまた御指導くださいませ。以上でございます。
○副議長(渥美泰一君) 鈴木 智君。
(二十四番 鈴木 智君登壇)
○二十四番(鈴木 智君) 二番目の質問について再質問をさせていただきます。
 私がそもそも今回このような質問をしたのは、本当は別の形で質問をしようと思っておりました。というのは知事も御案内のとおり、今日本人の学生で海外で勉強しようという学生の数が減っております。経済協力開発機構――OECDが作成しました図表で見る教育二〇一三年版によりますと海外で学ぶ日本人学生の数は、二〇〇五年の六万二千八百五十三人から二〇一一年には三万八千五百三十五人にまで大きく減っています。ちなみに日本の人口の半分もいない韓国の留学生数は約十三万九千人です。またOECDの加盟国ではありませんが日本の人口の約十一倍の中国の留学生数は、約十九倍の七十二万三千人です。これでは私――静岡もそうですが――日本が世界での世界競争に勝てるはずはないと思っております。ですから県内から海外に留学する学生を後押しする意味からも先ほど知事、若干答弁されましたが、県は来年度からでも新規で海外経験のある学生を目に見える形で積極的に採用するべきと思いますが、知事、若干言及されましたが、ぜひより具体的な来年度に向けた取り組みをイギリス留学経験のある知事からもしお伺いできればと思います。よろしくお願いします。以上、答弁を求めます。
○副議長(渥美泰一君) 川勝知事。
○知事(川勝平太君) 再質問につきまして、御答弁を申し上げます。
 まず留学生が減っていると。特にアメリカへの留学生が減っているということでございますが、これはもちろん一つには議員も御指摘のように若者に内向きな姿勢があるということもあるかと存じます。もう一つには、日本の若者の中にアメリカへの憧れが減ったということがあると思います。韓国やあるいはようやく国際化し始めている中国などは、アメリカへの憧れは極めて強うございます。しかしながら今の日本はヨーロッパ、アメリカからも一目置かれている存在になりまして、向こうに行って箔をつけて帰ってくるという時代ではもうありません。いやむしろ青年海外協力隊あるいはボランタリーなどの活動を通して、困っている外国人のために役に立ちたいと思っている若者が多うございます。ですから私は決して日本の学生の内向き志向だけが原因ではないというふうに認識をしております。
 にもかかわらず国際的な観点を持った若者が必要であることは言うまでもありません。特に静岡県は地域外交を展開しているので、そのような人材を積極的に採用しなくちゃならんということでございます。それだけに海外経験を持っている家族に生まれた子女であるとか、あるいは先ほどの青年海外協力隊経験者などとか、そうした人たちの中で有能な人材を積極的に採っていくという姿勢を持たねばなりませんが、これは人材確保のための本県の人事の方針も国際化しなくちゃならんということがございまして今ようやく緒についたばかりということでございます。なるべくこれを目に見える形で国際的な人材が普通にこの静岡県で活躍するという、そういう環境をつくってまいりたいというふうに考えております。以上でございます。
○副議長(渥美泰一君) 鈴木 智君。
(二十四番 鈴木 智君登壇)
○二十四番(鈴木 智君) 前向きな御答弁ありがとうございました。
 次の質問に移ります。
 最後に行政と地域が一体となった学校づくりのための取り組みのうち、静岡式三十五人学級編制の維持強化について伺います。
 現在、政府内では三十五人学級を見直す動きが出てきていますが、静岡式三十五人学級を維持強化することこそまさに今後実行すべき少子化対策であると考えます。政府の今後の方針いかんにかかわらず、県は独自でさらなる負担をしてでも三十五人学級を維持するとともに、早期に一クラス二十五人の下限を撤廃するなど少人数教育の強化に努めるべきと考えますが、県の決意を伺います。
 次に、コミュニティスクール導入促進のための取り組みについて伺います。
 コミュニティスクールの導入により学力の向上、いじめや不登校等の減少、教員の多忙化の解消、地域との連携強化や地域の活性化、学校や地域の防災力の強化等、さまざまな効果が期待できることは全国的に実証されています。そのため国は、ことしの六月に閣議決定した教育振興基本計画の中で保護者や地域住民の力を学校運営に生かす地域とともにある学校づくりにより、子供が抱える課題を地域ぐるみで解決する仕組みづくりや質の高い学校教育の実現を図ることを目的に平成二十八年度までにコミュニティスクールを全公立小中学校の一割、約三千校に拡大することを目指しています。
 静岡県では、ことしの三月に、磐田市内の計四つの小中学校が初めてコミュニティスクールに指定されました。しかしながら、ことしの四月一日現在で、コミュニティスクールが全くないのは全国で五県のみであり、コミュニティスクールに関しては、残念ながら静岡県は後進県と言わざるを得ません。県教育委員会の資料によれば、コミュニティスクールの導入が静岡県では進んでいない理由として、現在、学校と保護者、地域社会の関係が良好で協力体制も整っており、コミュニティスクールへの指定に踏み出さなくてもよい状況にあると判断する市町教育委員会が多いとしていますが、その判断は果たして客観的に正しいのでしょうか。
 平成二十五年度の教育委員会事務の管理、執行に関する点検評価によれば、地域にある学校を身近に感じている人の割合は、平成二十五年度の目標値六〇%以上に対して平成二十四年度は五三・一%で達成状況はC、地域で子供を育む活動に積極的に参加した人の割合も同様に目標値二〇%に対して九・一%のC判定。コミュニティーやサークル等、仲間と同じ目的を持って活動できる場所がある人の割合も同様に六六%以上の目標に対して五四・八%のC判定。それぞれの地域の特色を生かした教育行政が進められていると感じている人の割合も四九%以上の目標に対し、同じく三七・九%のC判定です。しかも四つの値は、全て平成二十一年度の基準値よりも悪くなっているというのが実態です。こうした数字を見る以上、前述の市町教育委員会の判断は現状に即していないと言わざるを得ず、よって県教育委員会は、コミュニティスクールの導入促進において各市町の教育委員会や学校に対し、これまでとは違う形で、より積極的に働きかける必要があると考えます。
 静岡県と同様の後進県の一つが北海道です。北海道では平成二十四年四月に初めて二校、ことしの四月に四校、七月に一校の計五校がコミュニティスクールに指定されていますが、今後の目標として平成二十九年度までに全体の一割、約百八十校の指定を目指しています。北海道は平成二十五年度の学力テストでは、小学六年生の国語Aで全国最下位だった静岡県よりも上位の四十二位だったものの、その他においては全て静岡県を下回り、小学六年生の全教科合計の平均正答数では四十三位の静岡をも下回る四十五位でした。学校と保護者、地域社会の関係が良好になることは、前述のように学力の向上にもつながるのですから、コミュニティスクールの取り組みにおきましても北海道以上に積極的、具体的に取り組むべきと考えます。
 コミュニティスクールの導入促進は、総合計画の次期基本計画案で新たに掲げられていますが、コミュニティスクールの導入にこれまで消極的だった後進県である以上、県は数値目標を掲げるとともに、財政的、人的支援、具体的には県独自の支援事業として小中学校をコミュニティスクールの研究校に指定し、導入を決定した学校には運営が軌道に乗るまで数年間は担当人員を配置するなどの支援を行うべきではないでしょうか。例えば人口十万人につきコミュニティスクールの研究校を一校ずつ置くことができれば、コミュニティスクール指定校と合わせて四十校余り、つまり県の公立小中学校の約五%がコミュニティスクールに関する取り組みを行うことになります。
 このように、具体的な目標値を立てた上で実効性ある支援策を実施すべきと考えますが、県の今後の具体的な方針と決意について伺います。以上の質問について答弁を求めます。
○副議長(渥美泰一君) 安倍教育長。
○教育長(安倍 徹君) 行政と地域が一体となった学校づくりのための取り組みについてのうち、静岡式三十五人学級編制の維持強化について、お答えいたします。
 本年度県教育委員会では、県単独措置により四十五人の教員を配置し静岡式三十五人学級編制を小学校三年生に拡充し、小中学校全学年を少人数学級編制とすることができました。対象となった学年の保護者からは、先生とのコミュニケーションがとりやすくなった、また学校からは、一人一人の児童により手厚い支援ができるため、自信を持って発表する子供がふえてきたといった少人数学級のよさを認める声が聞かれております。反面学級担任外の教員が減少したことにより、教員の負担増や多忙化を訴える声も届いているところであります。
 県教育委員会といたしましては、本年度配置いたしました県単独措置の教員や小規模小学校支援非常勤講師を引き続き配置するよう検討していくとともに、国の教師力・学校力向上七カ年戦略を活用して加配教員の増員を図るなど静岡式三十五人学級編制が一層充実するよう努めてまいります。以上であります。
○副議長(渥美泰一君) 加藤教育委員会委員長。
○教育委員会委員長(加藤文夫君) 追加してお答えいたします。
 この十月十九日に県の教育委員長を拝命いたしました加藤でございます。初めてですので簡単に略歴を申し上げさせていただきます。
 私は商社員として五十歳まで勤めまして、五十歳を機に郷里の静岡県に戻り、静岡県で会社の経営を行って四年前から公職である教育委員を務めております。
 私が尊敬しておりますのは、戦前に三井物産の社長をやっておられ戦後に国鉄の総裁を務められた石田礼助氏でございます。彼は国会の場で自己紹介で、粗にして野であるが、卑ではないというふうに自分を紹介しておられます。それには及ぶべきもございませんけれども同じような気持ちで公職を務めたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
 今、鈴木先生から質問のあった点ですが、実際に県として取り組んできたのは平成十七年から平成二十二年まで試験的にコミュニティスクールを導入していましたが、その後中断してこの二十五年になって再びコミュニティスクールを指定してスタートしております。
 この再開した理由としましては、コミュニティスクールということについて今鈴木先生がおっしゃったように同じような説明を教育委員としては受けたんですが、果たしてそういうものだろうかということで先進県であります神奈川県横浜市を訪れましてコミュニティスクールの実態例を我々自身が視察してまいりました。
 その中で、ベッドタウンであるにもかかわらず学校を中心としてコミュニティーがきれいにでき上がっている。したがってコミュニティスクールは、単に子供たちの教育環境を整えるだけではなくコミュニティーを再生する力、創造する力があるというようなことに我々は気がついたわけです。そこで持ち帰りまして静岡県でも積極的に導入すべきであるということで二十五年度の取り組みが始まりました。したがいましてこの取り組みを通して次年度以降さらに大きく発展させたいというふうに考えております。
 また、先生から指摘されましたように、学力テストの問題も大きな問題になっています。その中で地域・家庭・学校、県民総がかりで、この状況を脱する必要があるというふうなことを言っているわけですけれども、言葉だけきれいでも実際に取り組まなければ総がかりにはなりません。そこで総がかりになるためには、一つのばねとしてこのコミュニティスクールの活用というのは非常に大事ではないかなというふうに考えております。
 どうぞ、これからも御支援のほど、よろしくお願いいたします。
○副議長(渥美泰一君) 鈴木 智君。
(二十四番 鈴木 智君登壇)
○二十四番(鈴木 智君) では、二番目のコミュニティスクールに関して再質問させていただきます。
 教育委員長が神奈川県の先例を見ていただき、そしてコミュニティスクールの中身についてよく御理解していることは承知をいたしましたし、これから積極的に導入に向けて取り組んでいくその姿勢は伝わったわけでありますが、ただ具体性に欠けているのではないかと思っております。
 加藤委員長は、十月二十八日の定例委員会でこのように述べています。学校ごとに個別性があるので、個別に考えていただくことも大切である。しかし、個別性を優先すると、考えています、対応していますで終わってしまうので、まずは全県下でやらなければいけないことを県教育委員会で決定して、これを必ずいつまでにやってくださいと指示し、その上で個別の問題を洗い出して個別に何をやるかをそれぞれの学校が申し出る。そしてやったかどうかを確認する。それが具体的だということである。
 まさにおっしゃったようにコミュニティスクールの導入促進におきましても、ほかにも委員長は、法律違反にならない限り何でもやるとおっしゃっていますけれども、ですから何でもやる。そして具体的に目標値を決定して行動しなければ何も進まないじゃないかと思いますが、加藤委員長の再答弁を求めます。
○副議長(渥美泰一君) 加藤教育委員会委員長。
○教育委員会委員長(加藤文夫君) はい、そのように私は教育委員会の場で申し上げました。その気持ちは変わっておりませんが、ただ教育行政は三層構造になっておりまして、第一層目に文科省がございます。その下に教育委員会があって、その下に市町の教育委員会と、こういう仕組みになっておりますので、言葉で申し上げたことを具体化するという段階においては、相互のコミュニケーションが必要であるということで我々の問題意識とそれから市町の問題意識を共通化する。そういう作業をきめ細かく進めていくと。その中で今言ったような話が進むのではないかなというふうに思っております。
○副議長(渥美泰一君) 鈴木 智君。
(二十四番 鈴木 智君登壇)
○二十四番(鈴木 智君) 再々質問をしたいと思いますが、元Z会の社長さんとしては、ちょっと歯切れが悪いのかなと思っております。もちろん現場とのコミュニケーションは大事ですが子供たちは、今小学校であるいは中学校で勉強しております。今のようなお話ですと子供たちが卒業してからやっと何かできるような形になるのかなと思いますので、もっとスピーディーに明確な方針を立てて進めていただきたいと思いますが、再度答弁をお願いします。
○副議長(渥美泰一君) 加藤教育委員会委員長。
○教育委員会委員長(加藤文夫君) 具体的なことは、決めるのは市町の教育委員会ですけれどもその決める内容につきましては、会議の場で事細かにお話ししていますので、共通する問題についての共有とそれから何をしなければいけないかということについては、心を同じくしていると思っております。したがってここで何をしろということは地方自治のあり方からいってあるべきことではないので、ここでその点について申し上げるのは避けさせていただきたいと思います。

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